世界のトレンドから、ニューノーマル時代の無人化・省人化を考える

2023年04月17日

ドイツ製造業の無人化・省人化の成功事例

製造業が多いドイツは、2011年に「Industry 4.0(インダストリー4.0)」を策定し、官民一体となってDXを進めてきました。日本に比べて、ドイツは製造業における無人化・省人化の実現が先行していると言われています。ここでは、製造業、エネルギー、ヘルスケア、インフラストラクチャーの分野におけるサプライヤー企業のシーメンス株式会社(Siemens K.K)の事例をご紹介します。

アンベルク電子製品工場は、同社の主力工場の一つで、比較的小型の工業用電子機器を組み立てています。1日約120種類の製品バリエーション、年間で1700万個の製品が製造されており、生産切り替えは1日に350回も行われています。

このように頻繁に発生する段取り替えに対応するため、作業の順番や組み合わせの選択肢は膨大な数になります。従来は、逐次発生する変更の判断を人の経験からくる勘で行っていましたが、これをデジタルテクノロジーを活用し効率化することを目指しました。

この目標を達成するために、同社は、AI、インダストリアルエッジコンピューティング、クラウドソリューションなどの最新テクノロジーの導入を積極的に行い、柔軟で効率的な生産体制を整えることに成功しました。その結果、工程の75%が自動化に成功し、生産数は10年間で約6倍に増加しました。現在、同工場はIndustry 4.0を代表するスマート工場と言われています。

オフィスの自動化を実現するRPAプラットフォーム3選

変化が早く、競争が激化する昨今のビジネス環境では、紙ベースの管理など昔ながらの古いプロセスから脱却し、管理業務・事務業務でも自動化を進める企業が増えています。

自動化を進めるメリットとしては、下記の点が挙げられます。

  • 経費削減
  • 作業時間の短縮
  • 余剰の防止
  • 大きな保存スペースの確保
  • 容易なドキュメントへのアクセス
  • 容易なワークフロー管理
  • 操作プロセスのスピードアップ
  • 意思決定のスピードアップ
  • カスタマーリレーションシップの強化
  • スムーズな部門間のコミュニケーション

PRA(Robotic Process Automation)は、AIを活用して働くコンピューター内のロボットで、人間の行動をシミュレートすることにより、ビジネスプロセスを実行します。これにより、労働集約型の業務や繰り返し作業を自動化することが可能になります。

ここでは、管理部門における省人化・無人化に役立つ有名なPRAプラットフォームを3つご紹介いたします。

UiPathy(アメリカ)

UiPath社は「オートメーションファースト」を掲げ、デジタル時代にすべての人がロボットを使用することを推奨・支援しています。コーディングの必要がなく、ドラッグ&ドロップでロボットのアクティビティを操作するなど、直感的で使いやすい点が特徴の1つです。

また選択できるアクティビティは400種類以上と豊富です。オープンなプラットフォームも特徴で、WindowsアプリやMicrosoft Officeでの操作についても安定して自動化することが可能です。UiPath社は、無料のトレーニングも提供しておりユーザーのデジタル知識の習得についても手厚いサポートを提供しています。は、顧客のニーズに寄り添ったサービスが特徴で、導入から運用まで全面的なソリューションを提供しています。

Automation Anywhere(アメリカ)

Automation Anywhereは、オンプレミスのクラウドサービスを提供しており、大企業、中小企業に人気のRPAプラットフォームです。高度なセキュリティ、プラットフォーム独立型モデル、リアルタイムのレポートおよび分析などに強みを有しています。

また、SMARTと、インテリジェント オートメーション (IA) を使用しており、RPAとAIテクノロジーを組み合わせることにより、エンドツーエンドのビジネスプロセスをスピーディーに自動化します。

Blue Prism(イギリス)

Blue Prismは、バックオフィスの管理業務を完全に自動化するソリューションを提供しています。世界で1,800以上の企業で導入されており、RPAのパイオニアと言われています。統合的な管理がしやすく、セキュリティにも優れていることが特徴です。その他にも、ロードバランシング、暗号化、監査などの機能も提供しています。

RPAを活用したオフィスの無人化・省人化事例

Symantecの事例

サイバーセキュリティのリーダーSymantecは、注文管理プロセスを自動化するためにRPAとAIを導入しました。これにより、24時間体制で注文の分析、編集が可能になりました。

コカ・コーラの事例

コカ・コーラ社は、人事部門にRPAを導入しました。目的は次の3つです。

  1. シームレスな人事プロセスの実現
  2. タイムリーで正確な給与支払いに関する作業の実現
  3. 従業員からの問い合わせに適切に素早く対応すること

これらのゴールを達成するために、それぞれの作業の工程数、頻度、担当者数、各作業の優先順位を確認し、自動化が可能な作業と、自動化することによりミスが起こる危険性の高い作業を振り分けました。これによって洗い出された150のプロセスをRPAを用いて適切に自動化した結果、フランチャイズ戦略によって増えた作業を人員補充することなく対応することに成功しました。

また人事部門の既存の人事従業員は、自動化によって生まれた空き時間を、より重要でクリエイティブな業務に充てることが可能になりました。他部門の従業員からの問い合わせ対応の品質も向上しました。

日本企業における無人化・省人化

製造業においては、2016年には日本とドイツ間でIoT/Industry 4.0協力に係わる共同声明が発表され、ドイツとIoT分野での協業が進んでおり、ロボットやAIなど新しいテクノロジーにより無人化・省人化に成功している企業も多く見られるようになってきました。

しかし、一方で、日本の製造業における無人化・省人化を含むスマートファクトリーへの移行は、ドイツや中国などに比べると遅れていると言われています。Industry4.0が目指すDXを実現するには、ドイツや中国のように官民一体となって、雇用の確保・創出の点まで考慮した戦略を進めることが必要と言えるでしょう。管理部門においても、RPAやAIの導入を進めている企業が日本でも増えてきています。

しかし、DXを推進しているものの成果が限定的だと感じている企業が多いのが実情のようです。製造業、管理部門、ともにDXを成功させるための課題として多くの企業が挙げているのがデジタル人材の確保です。

デジタル人材を育成しRPAやAIなどのテクノロジーを目的によって正しく活用することによって、効果的な自動化を進めることができることが実現可能となるでしょう。

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