欧米事例から学ぶ、DX推進のためのロードマップ

2023年04月26日
著者:

はじめに

昨今、様々なメディアにおいて、DX(デジタルトランスフォーメーション:Digital Transformation)というキーワードを日常的に目にするようになりました。

日本でも以前から多くの企業がDXの推進に力を入れようと動いているものの、実際には具体的な取り組み方がよく分からないという声も多く、様々な課題に直面しているようです。

今回は、DXの概念や2022年に経済産業省から公表された「デジタルガバナンス・コード2.0」について解説するとともに、欧米企業の事例から、DXを成功させるためのポイントもご紹介します。

DXとは?

日本におけるDXは、2018年に経済産業省が「DXを推進するためのガイドライン」を発表したことが1つのきっかけとなり拡大し始めました。同ガイドラインによると、DXの定義は以下の通りです。

“企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること”。
(参照:経済産業省『デジタルトランスフォーメーションを推進するための ガイドライン』)

DXは難しいように思えますが、簡単に言うと「デジタルを活用した事業や組織の改革」のことです。ITツールやデジタル技術の導入によって、新しいビジネスやサービスを生み出したり、事業や組織の競争力を高めることを意味します。

「デジタルガバナンス・コード2.0」とは?

経済産業省は、2022年(令和4年)9月に「デジタルガバナンス・ コード」と「DXを推進するためのガイドライン」を統合し、「デジタルガバナンス・コード2.0」として公表しました。

“経済産業省のDX推進施策体系を踏まえて、利用者視点から「デジタルガバナンス・ コード」と「DX推進ガイドライン」を統合することが望ましいと考え、有識者による検討会(「コロナ禍を踏まえたデジタル・ガバナンス検討会」(令和3年1月~8月))で の議論を経て、両者を統合し、「デジタルガバナンス・コード2.0」として公表しました。 (令和4年9月)”
(参照:経済産業省『デジタルガバナンス・コード2.0(旧 DX推進ガイドライン)』)

「デジタルガバナンス・コード」とは、日本のDXを推進するために経営者に求められる対応のことで、経済産業省が2020年11月に発表したものです。

その更新版となる「デジタルガバナンス・コード2.0」では「デジタルガバナンス・コード」に、新たに「デジタル人材の育成や確保」や「SX/GX」などの一部の内容や項目が追加されています。「DXを進めたいけれど何から始めたらいいのかわからない」といった方にもわかりやすい内容になっています。

DX(デジタルトランスフォーメーション)の現状と課題

世界におけるDXの現状と阻害要因

2020年に、米IT企業であるデル・テクノロジーズが世界各国の4,300人のビジネスリーダーを対象に行ったアンケートによると、回答者の3分の1が不確かで変化が激しい最近の環境下において、2、3年後に自社が生き残れるかどうかを懸念していることがわかりました。

このデル・テクノロジーズの調査では、94%が「DXを阻む障壁に直面している」とも回答しています。米テクノロジーメディア・調査会社 International Data Group(IDG)社が、DXを推進中または計画中である従業員数1,500名以上の米企業を対象として実施した調査によると、DXにおける主な阻害要因として、「データのプライバシーとセキュリティの問題」、「予算およびリソースの不足」の他に、「組織幹部による支援の欠如」も挙げられています。

DXを推進するには、経営陣の理解と協力、そして異なる部門間での連携が必要となってきます。しかし、実際は部門間での協働ができる体制になっていないケースも多く、経営層によるDXへの理解と支援は、企業がDXを進める上で非常に重要な要素の一つです。

米企業におけるDX戦略の失敗と教訓

経済産業省が2019年に発表した「DX 推進指標とそのガイダンス」によると、現在は日本でも多くの経営者がDXの必要性を認識し、デジタル部門設置などの取り組みを行っているものの、ビジネス変革にはつながっていないというのが現状のようです。

そこで、米大手コンサルティング会社McKinsey & Company社が、様々な業界の企業に対する調査に基づいて作成した、DXを成功させるためのポイントをご紹介します。

①General Electric社(GE社)の事例

GE社は、2011年に「Industry Internet」戦略を打ち出し、産業向けIoTプラットフォームの構築に多額の投資をしました。その後、2015年にはデジタル戦略をリードする事業部門「GE Digital」を立ち上げ、1,500名以上を新規採用、2020年までに同社を世界トップレベルのソフトウェア企業にする目標を掲げました。

しかし、なかなか成果を得ることができず株価が低迷を続けたため、「GE Digital」は長期的なイノベーションではなく、短期的な業績向上に目標を変更せざるを得なくなってしまいます。そして、2017年に当時の経営陣は退陣を余儀なくされました。大規模なDXに取り組む最中、業績面の問題によりトランスフォーメーション(変革)半ばで経営陣が退任するケースは他にもたくさん見られます。

②Procter & Gamble(P&G)社の事例

P&G社は、2011年に「地球上で最もデジタルな企業」になるための DX イニシアチブを提唱。同社のあらゆる事業部門にテクノロジーを適用し「消費者向け商品・サービスを改善する」という目標が掲げられ、莫大な投資が行われました。しかし、漠然とした目標が仇となり、リーマンショック後の世界経済危機の不況下において具体的な達成目標がなかったため、投資に対して得られた効果は僅かでした。さらには、一部で競争力が低下するという結果に終わってしまいました。

この2社は、市場競争や経済情勢といった外的要因を十分に考慮して具体的なDX戦略を策定していなかったことが失敗の要因と考えられています。DXによって成果を上げるには、対象を絞り、明確な目標のもとにデジタル投資を行うことが大切ということを示した事例と言えます。

DX推進の鍵

DXに成功する組織の特徴

①Ruthlessly focus on a clear set of objectives(明確に設定された目標に徹底的にフォーカスする)

DXに成功する企業は、多くの異なる課題に取り組むのではなく、「生産性の向上」「カスタマージャーニーの再形成」など、実際にビジネスの結果につながるような2、3個の具体的なデジタル目標に注力しています。

②Be bold when setting the scope(大胆にスコープを設定する)

DXを推進するには、異なる部門間での連携が必要となってきます。会社全体が一丸となって特定の目標に向かって取り組むことが重要であるため、特定の部門にだけDXの投資を行うのではなく、複数の部門に対して幅広く行う必要があります。

③Create an adaptive design(柔軟で軌道修正可能な戦略を立てる)

デジタルがもたらす速い変化のスピードに対応するには、DXの戦略自体も柔軟に変化・適応していかなくてはなりません。最初に設定した数年にわたる投資要件や目標などをその時々の事業環境などに合わせて見直していく必要があります。最低でも月に1回のペースで調整をしていくことが成功へつながる大切な要素です。

④Adopt agile execution approaches and mind-sets(機敏な実施体制と思考を持つ)

DXの実施体制においても柔軟性が求められます。DXで成果を出している企業の多くはトランスフォーメーション(変革)が行われている間、リスクへの挑戦やイノベーション、部門間の積極的なコラボレーションを推奨しています。中には、従業員の積極性を促すために、DXへの貢献度を評価や賞与制度に取り入れている企業もあります。また、実行しながら改善を加えていくアジャイル(機敏)な体制を作るためには、優れたデジタル人材が必要不可欠になります。成功している多くの企業が新たに優秀なデジタル人材を雇用すると同時に、デジタル人材の育成にも力を入れています。

⑤Make leadership and accountability crystal clear(リーダーシップと説明責任を明確にする)

企業が推進するDXに向けた取り組みは、リソースの優先順位や組織におけるビジネス全体の方向性に大きな影響を及ぼします。リーダーがどのようにDXの戦略とその実行を先導していくかによっても成功が大きく左右されます。経営層はもちろん、特定の取り組みを実行するリーダーも積極的にDXの取り組みに関わっていく必要があります。DXに成功している企業の経営層は、定期的にDXの進捗状況を社内外に説明する機会を設けています。また、各取り組みについて誰が責任を負っているのかを明確にしています。

日本におけるDXの展望

日本でも、多くの企業がDX推進を加速させており、2022年には「デジタルガバナンス・コード2.0」が発表され、DXに取り組みやすい環境になりました。「DXに取り組みたいけれど、知識がなく何をしたらいいのかわからない」という方は、まずは「デジタルガバナンス・コード2.0」を参考にしてみるのもいいでしょう。

一方で、株式会社電通デジタルが行った調査によると、回答した企業の約75.4%(2021年から5.5%増加)が「成果が出ている」と答えているものの、「あまり成果が出ていな」や「まったく成果がでていない」と答えた企業もいることから、導入前に社内の体制の見直しや推進に向けた現状や課題に対する認識を共有しておくなど持続的に取り組む準備が必要でしょう。また、DX先進国である欧米諸国の事例からヒントが得られるかもしれないので確認してみてください。
※出典:電通デジタル | 日本における企業のデジタルトランスフォーメーション調査(2022年度)


関連記事 この記事を読んだ方へおすすめ








「akerun(アケルン)入退室管理システム」に関する資料

資料ダウンロード

「Akerun入退室管理システム」導入を検討されているお客様に
製品・サービスの特長をご紹介します。

3分でわかる!
資料ダウンロード