AkerunとのAPI連携を活用した法人向けの無人置き配サービスを開発、拠点の省人化・無人化を通じた働き方の再定義で事業運営体制を変革

Q. はじめに、日本瓦斯株式会社(以下ニチガス)と株式会社エナジー宇宙(以下エナジー宇宙)の事業内容を教えてください。

ニチガスは1955年に創業し、LPガスの小売事業からスタートしました。現在ではLPガスだけでなく、都市ガスや電力も提供しており、契約件数はすでに200万件を超えています。2016年の電力自由化、2017年の都市ガス自由化のタイミングでも積極的に市場参入し、東京電力のような大手事業者と協業するなど、チャレンジを厭わないDNAが根付いている会社です。

IT領域でも早い段階からDXに注力してきました。例えば、神奈川県にある「夢の絆」というLPガス充填基地では、基地や各種システムとお客様のデータを空間に再現(デジタルツイン)し、リアルタイムなデータ連携により配送やLPガスの製造などの効率化を実現しています。

また、エナジー宇宙は、2024年1月にニチガスグループ組織再編によりエネルギープラットフォーム会社として設立されました。ニチガスグループが進化させてきた自動検針・LPガス充填・配送・保安、都市ガス導管の建設・保守、DXを実現するさまざまなツールなどを他事業者様とシェアリングし、エネルギー業界全体が抱える課題の解決に貢献しています。

今回ご紹介する「ニウケマスター」も、現場から生まれたアイデアをもとに開発されたプロダクトです。当初は自社利用を前提としていましたが、当社での導入効果が高かったため、現在は他事業者様へのご提供も行っています。ガス事業者様に限らず、さまざまな業種でご活用いただくことが可能です。

Q. 荷受けソリューション「ニウケマスター」開発のきっかけは?

背景にあったのは、静岡県の浜松エリアへの営業展開構想です。2020年当時、すでに静岡、三島、富士、焼津などに営業所がありましたが、さらに西側へ進出する上での拠点が必要でした。しかし、浜松までの中間地点はマーケットが小さく、投資対効果に課題がありました。

そこで、一定規模のマーケットを見込める浜松エリアへの進出を検討していましたが、ガス業界には「保安距離」と呼ばれるルールがあり、お客様から20km・30分圏内に営業所がないと事業展開ができません。そこで、「営業担当だけが常駐する無人営業所」という新しいスタイルの営業所を構想したんです。

そして、浜松営業所では、現金を扱わないキャッシュレス化で金庫が必要ない仕組みを作り、さらにスマートメーターやお客様向け専用アプリで帳票や検針のペーパーレス化も実現しています。実際に半年ほど運用してみたところ、事務員不在でも営業所の運用は可能でしたが、唯一残った課題が「荷受け」でした。

当社の業態では、お客様にお届けするガスコンロや給湯器などの機器やお客様から回収したそれら機器の受け取りが必須で、従来は営業所が無人の時間帯などは再配達の調整や最寄りの集配所に受け取りに行く手間や時間ロスが発生していたのです。そこで、営業所の完全な無人化には「法人向けの置き配」が必要だと考え、ニウケマスターの開発に至りました。

Q. 「ニウケマスター」には、Akerun 入退室管理システム(以下Akerun)を組み込んでいただいています。選定の決め手はどこにありましたか。

スマートロックや入退室管理システムなど、さまざまな製品を比較検討し、インターネットでも調査を重ねましたが、最終的にはAkerunが最も要件に合っていました。理由は、API連携が可能で、当社で開発し拠点管理などに利用している「マイオフィス」というWebコンソールにもスムーズに統合できたことが大きかったです。また、シンプルなUI/UXや洗練されたデザインもAkerunを選んだ理由です。

「ニウケマスター」では、Googleチャットとの連携で、Akerunの入退室履歴を参照して、誰が、いつ、来訪し退出したかといった情報がリアルタイムに通知される仕組みを「マイオフィス」上に構築しています。また、Akerunが設置されている拠点に関しては、API連携で遠隔からAkerunの施錠・解錠の操作もできるようにもしています。

実際、当社の営業所で「ニウケマスター」を導入していますが、「ニウケマスター」に初めて接した配送事業者様でも「使い方がわからない」という問い合わせは一切ありません。また、設置する際も、Akerunは専用アプリのチュートリアルに従えば誰でも簡単に設置できますし、説明書がなくても直感的に使える設計で、その導入や利用のシンプルさが大きな魅力ですね。

Q. ニウケマスターによる営業拠点の無人化で、現場にはどのような変化が起きましたか?

一言で言えば、業務の再定義です。営業所における事務作業を棚卸ししてみると、意外なほど多くのムダが見えてきました。例えば、3,500円の料金徴収で30件も集金に回るというような非効率に思える業務が残っていたんです。

この業務の再定義により、事務員の一部は営業職に転換し、より価値あるコア業務へとリソースを再配分することができました。この業界には「紙じゃないとダメ」といった従来型の慣習もまだ根強く残っていますが、そういった処理はできるだけ複数拠点を一括して管理する体制にすればいいと考えました。

現場にはさまざまな課題がありますが、それを解決できるテクノロジーが続々と登場しているので、課題とテクノロジーをつなぎ合わせて、本質的な課題の解決に集中すべきだと考えているんです。「ニウケマスター」も、使用者の視点から現場発で生まれたプロダクトです。その点でも、「ニウケマスター」の導入意義や営業拠点の無人化の価値は非常に大きいと考えています。

Q. 現場や配送事業者からの反応はいかがですか?

配送事業者の方々からは、「ニチガスへの配達にはストレスがない」「ニチガスが一番スムーズに荷受け・荷渡しができる」と高く評価いただいています。特に、お昼休みなど配達先に人がいないような時間帯でも、ニウケマスターのような24時間荷受け対応が可能な仕組みがあると「この時間帯はニチガスに届けよう」と配送事業者の配送の効率化にも貢献できるんです。

従来のようにキーボックスを使用したり、営業所のスタッフに声をかけて鍵を開けてもらう必要もありませんし、各配達先ごとに異なる煩雑なルールに縛られないことも評価されています。全国のさまざまな企業から「置き配の部分だけでも導入したい」という声をいただくこともあり、外販のさらなる拡大にも手応えを感じています。

Q. 今後、「ニウケマスター」を活用して、どのように事業展開させていきたいですか。

次のステップは「在庫管理との連動」です。搬入・搬出の記録が取れるようになれば、リアルタイムな在庫管理に応用できますし、出荷(搬出)という概念までカバーすれば、倉庫業務全体のDXにもつながります。

例えば、浜松営業所の荷受け操作を、鶴見営業所の事務員が遠隔で行うとします。これは、事務員が必ずしもその場にいる必要はないという証明になりますよね。こうした遠隔対応を標準化し、拡大していくと物理とデジタルがつながった、「現場業務のメタバース化」に発展していくと思うのです。

営業所って、どんな会社にもあって、ほとんど必ず事務員が1人はいます。でも、1日に1回しか来ない荷物のためだけに、事務所に人が常駐することは合理的ではありません。無人の営業所の運用や、「ニウケマスター」の開発・導入といった取り組みを通じて、私たちは「人がいる理由」を見直すことができました。それは、社内の働き方や人材活用、そしてキャリア形成の変革にまでつながる、単なる業務効率化を超えた”働き方の再設計”であり、私たちにとって大きな一歩になりました。

日本瓦斯株式会社/株式会社エナジー宇宙

日本瓦斯株式会社(ニチガス)
1955年に設立されたエネルギーの小売事業などを展開する大手企業。LPガスの販売からスタートし、現在では都市ガスや電気の販売にも対応。従来のガスや電気を仕入れて販売するという事業モデルを刷新し、地域社会への最適なエネルギー利用を提案する「エネルギーソリューション事業」への進化に取り組んでいる。また、近年はデジタル技術の活用にも注力し、DXによるさまざまな社会課題の解決にも取り組んでいる。

株式会社エナジー宇宙
2024年1月に設立されたエネルギーインフラ企業。ニチガスグループの一員として、LPガスや都市ガスの調達・供給、配送網の整備、ガス充填工場の運営など、エネルギー供給を支える基盤構築を担っている。現場の課題に即した技術開発にも積極的に取り組んでおり、オンラインガスメーター「スペース蛍」や法人向け置き配ソリューション「ニウケマスター」などの提供を通じて、社内・社外を問わずさまざまな業務現場のDXを支援している。

日本瓦斯株式会社/株式会社エナジー宇宙

日本瓦斯株式会社 常務執行役員 営業本部 西関東支店 支店長

鈴木 壮 さま

株式会社エナジー宇宙 プラットフォーム営業本部 営業課 営業課長

長島 正憲 さま

目的/効果

01.

置き配ソリューションによる営業拠点の省人化・無人化により、施設運営の効率化に加えて運営コストを大幅に削減

02.

入退室管理と荷受け情報のデジタル連携により、配送事業者の配送業務の効率化とストレスのない荷受け・荷渡し体験を実現

03.

バックオフィスの働き方の再定義とAkerunによる遠隔対応で、社内人的リソースの有効活用を推進

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