INDEX
はじめに
クラウド入退室管理システムと一言で言っても、解錠方法や設置方法、導入したい機能によってシステムもさまざまで、クラウド入退室管理システムの導入には、自社の目的に合ったシステムを選ぶ必要があります。
本記事では、クラウド入退室管理システムを導入するにあたってのメリット・デメリットや、クラウド入退室管理システムの認証方法に加え、主なクラウド入退室管理システム12種類をご紹介します。
クラウド入退室管理システムとは
入退室管理システムとは、「いつ」「誰が」「どこに」入室・退室したか、「誰に」「どの部屋の」入室を許可するかなどを管理・記録するシステムのことです。他にも「入退出管理システム」「出入管理システム」「入退館システム」などと呼ばれることがあります。これらの記録をクラウド上の管理ツールなどで管理し、どこからでも確認できるようにしたのがクラウド入退室管理システムです。
入退室管理システムが開発される前は、物理的な鍵で入退室するしかありませんでした。そのため入室するには鍵の貸し借りを通じてしか行えず、「いつ」「誰が」「どこに」入室・退室したのか、「誰に」「どの部屋の」入室を許可したのか、といった細かい内容は紙の台帳に書いたり、Excelなどに手入力し管理するしかなかったのです。
しかし、手書きや手入力では人的ミスが起こりやすくなるほか、入退室の度に記入や入力するのが面倒、また記入漏れなどで実態が把握しづらいなどのデメリットが多く、管理に手間がかかるわりに正確性に欠けるという課題が残ったままでした。
入退室管理システムは、鍵の開け閉めをICカードや暗証番号、スマホアプリ、生体認証などを使って行い、「いつ」「誰が」「どこに」入室・退室したかがその都度自動で記録されます。クラウド入退室管理システムなら、さらにクラウド上から遠隔操作で「誰に」「どの部屋の」入室を許可するかといった権限を付与したり、記録を確認したり、アプリやWeb管理ツール上から部屋の鍵を開け閉めできたりします。
クラウド入退室管理システムのメリット・デメリット
クラウド入退室管理システムのメリット・デメリットについてご紹介します。
クラウド入退室管理システムのメリット
クラウド入退室管理システムには、以下のようなメリットがあります。
1.外部からの不正な侵入者を防げる
企業に出入りするのはそこで働く従業員だけではなく、取引先や清掃員、警備員などさまざまな人がいます。中には、従業員や清掃員に混ざって外部の不審者が侵入しようとすることもあるかもしれません。その場合、クラウド入退室管理システムを使ってあらかじめ入室・入館する人に権限を付与しておけば、権限を持つ人以外の侵入を防ぐことができます。
物理的な鍵はピッキングや複製などの懸念がありますが、クラウド入退室管理システムならクラウド上でデジタルな鍵の管理などを完結できるのでこれらの心配はありません。さらに、防犯カメラと連動し入退室の履歴と照らし合わせることで、何か起こった際にも迅速に対応ができるでしょう。
2.正確な勤怠管理ができる
入退室の記録を管理することで、勤怠管理にも役立てられます。特に、クラウド入退室管理システムと勤怠管理システムを連携させれば、タイムカードで打刻しなくても、部屋にその日最初に入室した時点で出勤、その日最後に退室した時点で退勤とわかるため、正確な労働時間の記録に役立てられるでしょう。
特に、2019年に改正された労働安全衛生法では、企業が労働者の労働時間を「客観的に把握」することが義務化されているため、従業員の労働時間を管理表に手書きしたり、Excelに手入力するなどの自己申告ではなく、タイムカードやICカード、パソコンの使用時間などで客観的な記録を取得する必要があります。
この法制上の要件に対して、クラウド入退室管理システムを導入することで、手間なく、リアルタイムに正確な労働時間を把握できます。これにより、例えば、休日出勤や残業が多いといったイレギュラーにもすぐ気づけるでしょう。
これまで、月末にタイムカードでしか把握できていなかった休日出勤や残業の過多にリアルタイムで気付くことができれば、過剰な労働の防止や慢性的な残業の削減を未然に防ぐこともできます。
3.入退室管理業務の効率化になる
クラウド入退室管理システムを使えば、「誰に」「どこの」入室許可を出しているか、が管理画面から一目でわかります。権限の付与も管理画面から行えるため、オフィスの移転や人事異動、入退職や転勤などがあった際にも、物理的な鍵を回収したり再配布したりする手間がかかりません。特に、勤怠管理と連携させることによって、労務管理の業務を従業員の勤務場所を問わず効率的に進めることができるでしょう。
4.内部の不正防止に役立つ
「いつ」「誰が」「どこに」入ったか、がわかるクラウド入退室管理システムなら、フロアや部屋ごとに入室できる人を制限することができます。例えば、社外秘や機密性の高い情報が保管されている部屋の解錠権限を限られた人のみに制限したりすることが可能です。
万が一、何らかのトラブルが発生した場合にも、入退室や解錠の記録を細かく残しておくことで、被害が発生した時間帯や場所、その時に入室していたメンバー、あるいは鍵を開けていた人物を特定し対応することができます。ICカードやスマホアプリの場合、防犯カメラや生体認証と組み合わせることで、なりすましも防ぐことができるので部外者の侵入リスクを下げセキュリティ強化に繋がります。
5.シェアオフィスなどに利用できる
クラウド入退室管理システムを使えば、遠隔操作で解錠や施錠、入退室権限の付与や削除、解錠権限の有効期間の設定などが行えます。そのため、予約を確認後に対面で鍵を受け渡すことなくシステム上から鍵権限を付与することができるため、空いているスペースを利用したレンタルオフィスやシェアオフィス、コワーキングスペースなどのシェアビジネスにも利用できます。
クラウド入退室管理システムのデメリット
クラウド入退室管理システムには、以下のようなデメリットも考えられます。
1.インターネット環境の整備が必須
クラウド入退室管理システムを使うためには、常にインターネットに接続できている環境でなくてはなりません。まずはインターネット環境を整備するところからスタートしましょう。
2.エラー時の対策を考慮する
クラウド入退室管理システムを利用するにあたって、システムエラーなどが発生するリスクは存在します。システムエラーの場合は発生した時にどう対処するのか把握しておく必要があります。
また、ICカードやハンズフリータグなどを使って入退室管理を行っていた場合、紛失によって解錠・施錠ができなくなってしまう可能性もあります。紛失した場合は速やかに届け出て新しいカードやタグを発行するなど、万が一のときの対策をあらかじめまとめておく必要があります。
クラウド入退室管理システムの認証方法
クラウド入退室管理システムの認証方法には、主に暗証番号やパスワード・ICカード・スマートフォン・生体認証の4つがあります。それぞれの方法について、詳しく見ていきましょう。
暗証番号・パスワード
暗証番号やパスワードは、扉やその付近に設置されたテンキーに番号や記号を入力して解錠するもので、古くから多くの場所で活用されています。施錠・解錠機器を設置するだけで導入でき、業者による工事が必要ないものも多いため、手軽に入室制御が行えます。多くの企業が取り扱っており馴染みのあるスタイルで、近年では低コストで導入できるのもメリットです。
一方で、暗証番号を盗み見られてしまう危険性があり、他の方法と比べると部外者の侵入リスクが高い方法でもあります。そのため、定期的に暗証番号を変更し、利用者にその都度通知する手間がかかります。また、「誰が」入退室したかの記録が取れないため、勤怠管理としては使えないほか、何らかのトラブルが起こった際に人物の特定ができないというデメリットがあります。
ICカード
扉にカードリーダーを設置し、ICカードをかざすことで解錠でき、また所有者を特定できるためクラウド上で入退室管理もすることができる認証方法です。社員証として使っているICカードに解錠機能を持たせたり、従業員それぞれが持つ交通系ICカードを登録したりすることで個人と紐づけることができます。認証機能を1枚のカードにまとめると、新たに解錠専用のICカードを発行する必要がなくコスト削減にもつながります。
さらに、ICカードにはチップが埋め込まれているため、偽造されるリスクが低く、個人の入退室を記録できることから勤怠管理システムとの連携も可能です。非接触で認証できるため、衛生的にも感染症対策を考えると大きなメリットと言えるでしょう。また、管理画面から簡単に権限の付与や制限ができるため、暗証番号のように番号の変更後に周知したり、入力時の周囲の目を気にしながら解錠するなど手間もかかりません。
しかし、ICカードには盗難や紛失のリスクがあり、入室できなくなってしまうだけでなく、悪意ある者に拾われた場合は悪用のリスクがあります。紛失や盗難があった場合はすぐに権限を削除しなくてはなりません。また、社員間で貸し借りを行うと個人が特定できなくなってしまうので貸し借りはしないよう、日頃から周知徹底しておく必要があるでしょう
スマートフォン
スマートフォンの普及とともに近年増加している認証方法で、スマートフォンを専用の機器にかざしたり、アプリからの無線通信を行ったりして解錠します。専用のアプリをインストールする場合は、QRコードを発行して専用機器にかざすことで解錠できます。特定の日時や時間設定が簡単に行えるため、来客が多い企業でも対応しやすいのが大きな特徴です。
スマートフォンは従業員がもともと使っているものを利用するため、新たにカードを発行する必要がないなど、カード発行のためのコストを削減できるほか、ICカードやハンズフリータグなどと比べて紛失や盗難のリスクが低いことがメリットです。しかし一方で、スマートフォンの充電切れで入室できないケースがあることや紛失・盗難の可能性がゼロではないことに注意が必要です。
生体認証
生体認証(バイオメトリクス)は最も精度が高く、セキュリティ面で推奨される認証方法ですが、高度な技術を利用するため他の方法と比べるとコストがかかる傾向にあります。これもさまざまな方法がありますが、主なものは指紋認証・静脈認証・顔認証などがあります。
1.指紋認証
指紋認証とは、主に手の指紋を使って個人を判別する認証方法で、指紋をかざす機器を扉に設置して入退室管理を行います。生体認証の中では比較的普及しているため、低コストで導入できるのがメリットです。一方で、指の汚れや傷などで指紋が読み取れないとエラーになってしまうこと、不特定多数が機器に接触することから、感染症対策などの観点で衛生的とは言い難いことがデメリットでしょう。
2.静脈認証
手のひらや指の内側、手首などの静脈を赤外線カメラで読み取ることで、個人を判別する認証方法です。静脈パターンは双子であっても異なり、年齢による形状変化もないため、生体認証の中でも認証精度が高く、指紋と比べてはるかに精度があるとされています。セキュリティレベルを高く維持できるため、銀行などでも使われています。一方で、導入コストが高いこと、寒さや運動後、怪我や絆創膏など身体の状態によっては認証しづらいことがデメリットです。
3.顔認証
目や鼻など、顔の特徴的な部分や顔部分の位置、比率などをもとに個人を判別する認証方法で、AIにより精度を高めることができます。認証速度が非常に速く、指紋認証や静脈認証などと異なり、同時に複数人を認証することもできるのが大きなメリットです。
近年は低価格化も進んでおり、コストを抑えて導入しやすくなっています。「顔を撮影されている」と感じることで、犯罪の抑制にもなるでしょう。一方で、光量など環境の変化、髪型やメガネ、マスクなど見た目の変化で認証できないケースもあるため注意が必要です。
クラウド入退室管理システムの比較ポイント
クラウド入退室管理システムを選ぶ際には、以下のようなポイントをチェックしましょう。
- 役職や部署に応じて入室制御を最適化できるか
- 扉ごとにセキュリティ強度を設定できるか
- 個人を判別した入退室履歴の記録がとれるか
- 他システムと連携できるか
- 解錠手段は使いやすいか
- 設置方法は後付けか交換か
オフィスのセキュリティ強化のためにクラウド入退室管理システムを導入する場合、役職や部署で入室制限を変更したり、扉ごとにセキュリティ強度を設定したりできるものを選びましょう。また、勤怠管理に利用するなら、個人を判別して入退室履歴の記録ができるものや、勤怠管理システムと連携できるものが良いでしょう。
主なクラウド入退室管理システム12選
最後に、主なクラウド入退室管理システムを12種類ご紹介します。
Akerun入退室管理システム
既存のドアに後付けで設置するだけで、いつも使っているスマートフォンやICカード、社員証などを鍵にできるクラウド入退室管理システムです。クラウド上で鍵権限や入退室履歴が管理できるのはもちろん、勤怠管理システムや決済システムなど他社と連携してデータを活用し業務効率化できます。
iDoors
ネットワーク接続できるICカードリーダーをドアに設置し、入退室管理を行うシステムです。電源からの配線で動くため、取り付けには工事が必要ですが、安定性や防犯性に優れています。ICカード、生体認証、QRリーダーなどによる解錠が可能です。
SECURE AI Office BASE
顔認証によるクラウド入退室管理システムで、入室時にはマスクを外さなくても顔認証ができます。体温測定や出退勤の打刻も同時に行えるため、感染症対策を行いながら労働時間の管理ができます。
KEYVOX
スマートフォンを利用した無人・非対面の入退室管理に強いシステムです。予約や物件管理、入室履歴管理、本人確認、決済などオフィスだけでなくスペースレンタル事業にも強く、ブロックチェーンを利用しているため安全性が高いです
FreeiD
バラバラだった鍵や決済を一つの顔認証IDでまとめるための「顔認証プラットフォーム」と言えるシステムです。入退室管理はもちろん、チケットシステムと連携したテーマパーク入館など、さまざまな認証サービスが利用できます。
RemoteLOCK
予約・受付などさまざまなシステムと連携することで、スペースレンタル事業に強い入退室管理システムです。利用者ごとに暗証番号やQRコードで遠隔から鍵を発行できるため、鍵の受け渡しの必要なくスペースを活用できます。
富士通ネットワークソリューションズ 入退室管理システム
手のひらの静脈認証とICカードで入退室管理を行う、非接触型のクラウド入退室管理システムです。静脈認証で強固なセキュリティを実現し、監視カメラとの連携もできます。複数扉の履歴や入退室状況を一括管理できるため、大規模施設でも使いやすいサービスです。
カギカン
専用のアプリをダウンロードすることで、スマートフォンのほかタブレット、パソコンなどさまざまなデバイスから解錠できます。故障時に無償交換ができるほか、スマートロックの電池交換や運用のサポートも無料で受けられます。
クラウド型入退室管理システムALLIGATE
スマートフォンやICカードで開錠できるクラウド入退室管理システムです。電池式から電気錠まで用途に合わせて選べたり、ます。遠隔で入退室権限の付与や無効化をしたり、勤怠管理システムや人事労務システムと連携したりすることがも可能です。
bitlock PRO
サブスクリプション型のクラウド入退室管理システムで、初期費用を抑えて月額利用料のみで利用を始められます。端末をドアに貼り付けるだけの後付けタイプのスマートロックなので工事不要ではじめることができます。入退室記録をCSVダウンロードし、勤怠管理システムと連携も可能です。
入退室管理システムにはビジネスメリットがたくさん!
クラウド入退室管理システムを使えば、オフィス内外の不正防止に役立つほか、勤怠管理を正確に行えて、入退室管理業務の効率化につながります。クラウド入退室管理システムをオフィスで利用する場合、「いつ」「誰が」「どこに」入室、退室したか、を個別に管理できることや、勤怠管理システムとの連携が便利です。Akerun入退室管理システムなら、入退室データの簡単な管理が可能で、勤怠管理システムなどさまざまなサービスと連携して業務効率化につなげられます。オフィスの入退室管理やセキュリティ強化、勤怠管理に悩んでいるなら、クラウド入退室管理システムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。