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オフィスの入退室管理システムを検討中だけど「具体的にどんなものがあるのか」「導入のメリットやデメリットは」「費用はいくらくらいかかるのか」など、疑問をお持ちの方もいることかと思います。
この記事では、入退室管理システムの導入をご検討中の方に、入退室管理システムとはなにか、メリット・デメリット、導入時のポイントを分かりやすくご紹介します。
入退室管理システムとは
はじめに入退室管理システムとは何か。製品やサービスによる違いを解説します。
入退室管理システムは「鍵の開閉+管理システム」
入退室管理システムとは、オフィスや店舗など複数人が出入りする場所で、ドアの施錠・解錠を行うと同時に入退室の権限管理や入退室の履歴の記録・管理ができるシステムのことをいいます。
「鍵の開閉+管理システム」と考えると分かりやすいでしょう。
入退室管理システムを導入することで、利用者は安心・安全でスムーズな入退室が行えるようになります。
また、企業や店舗オーナーはオフィスや店舗のセキュリティを高めながら、自動で入退室履歴を記録でき、労務管理や勤怠管理管理にも活用できるでしょう。
入退室管理システムの種類
一口に入退室管理システムといっても、製品やサービスにより違いがあります。導入の際は、利用目的や環境に応じて最適なものを取り入れることをオススメします。 では、どのような種類や違いがあるのか見ていきましょう。
製品やサービスによる違いで見るべきポイント
- 取付方法・設置方法
- 施錠・解錠方法
- 管理システム(管理画面)
- 連携できるシステム
取付方法
入退室管理システムを導入する際、大きな問題になるのが取付方法や設置方法です。取り付けは、自社のオフィス環境に合うものを選ぶとよいでしょう。
取付方法による違い
埋め込みタイプ | 工事で壁やドアに埋め込みで取り付ける |
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後付けタイプ | 既存のドア(錠前)にかぶせることで後から取り付ける |
大きく分けると壁やドアなど建物に取り付ける「埋め込むタイプ」と、工事不要でドア(錠前)などに取り付ける「後付けタイプ」があります。
埋め込みタイプの場合は、入居するビルなどの許可を取ったうえで工事して取り付けますが、高額な工事費や作業費、機器費用がかかる場合もあり、導入までの期間も長くかかります。
後付けタイプはスマートロックなどを活用して工事不要もしくは簡易的な工事で済むものが多く、すぐに導入でき、その分導入コストも低く抑えることができます。
後付けとはいえ、強力な産業用テープを使ったものなど簡単に取り外すことはできないようになっており、安全性は担保されています。
施錠・解錠方法
入退室管理システムを使っての施錠・解錠方法では、以下の4つが多く使用されています。
- 暗証番号を入力する
- ICカードキーをかざす
- スマートフォンアプリを使用する
- 生体認証(顔認証や指紋認証など)を利用する
施錠・解錠方法のなかで、暗証番号を入力する形式は以前から使われており、埋め込みタイプに多くあります。こちらはIDを持っていない人でも、番号が分かっていれば解錠できます。一方で、従業員以外の人でも暗証番号を知っていれば入室できてしまいます。また、不特定多数の人が入力ボタンに触れるため、感染症対策が難しいという点があるので注意が必要です。
一方、ICカードやスマートフォンアプリ、生体認証は従業員ひとり1人が自分固有のIDで登録するため、よりセキュリティが強化できます。また、かざすだけで施錠・解錠ができるため、入退室をスムーズかつ衛生的に行うことができます。
管理システム(管理画面)
入退室管理システムを選ぶ際は、管理画面の見やすさや使いやすさを確認することが大切です。解錠するためのデバイス(カード読み取り装置やスマートロックなど)に注目しがちですが、管理画面や管理アプリケーションの機能や使いやすさも確認しておくと導入後も安心です。
連携できるシステム
入退室管理システムは、ほかのシステムと連携することでさらに便利に使うことができます。
連携できるシステムは製品によって違いますが、クラウド型の入退室管理システムでは予め柔軟に外部の様々なシステムと連携できるよう開発されているケースが多くあります。
自社で使用したい勤怠管理や予約管理、決済などのシステムと連携しているものがあるのか、あるいは、将来的に使う可能性があるかを事前に確認しておくとよいでしょう。
連携させると便利なシステム例
- 勤怠管理システム
- 予約管理システム
- 決済サービス/システム
- 会員管理システム
- 顔認証システム
- メール通知サービス
- 業務用コミュニケーションツール(Slack)など
オフィスに入退室管理システムを導入するメリットとデメリット
近年、多くの企業が採用している入退室管理システムですが、実際に利用するメリット・デメリットにはどのようなものがあるのか確認してみましょう。
メリット
- 入退室がスムーズに行える
- オフィスのセキュリティを強化できる
- 入退室で従業員の出退勤管理まで行える
- 業務効率化により運営コストを抑えられる
デメリット
- ICカードキーを忘れると入室できない
- 導入時に多額の費用がかかる場合がある
- 工事が必要なケースや利用開始までに時間がかかる場合がある
ここからは、メリット・デメリットについて、具体的に解説していきます。入退室管理システムを導入において知っておきたいポイントを簡潔にまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
入退室管理システムのメリット
入退室管理システムを導入すれば、セキュリティ強化や管理業務の効率化、コスト削減などが期待できます。
入退室がスムーズに行える
利用者は会社から支給されるICカードキーや、専用アプリケーションをインストールしたスマートフォンなどを使用して、入退室を行います。
使用時には、入口にある入退室管理システムにICカードをかざしたり、アプリで解錠の操作をすることで施錠・解錠ができ、入退室記録を残すことができます。
オフィスセキュリティを強化できる
入退室管理システムを導入すると、オフィスに「誰が」「いつ」出入りしたかを管理者が把握できます。これにより、オフィスへの不審者の侵入を防ぐことができ、働く人の安全と企業の情報を守ることにもつながります。
入退室記録はPマークやSMSなどのセキュリティ認証の取得の要件としても活用できます。
入退室で従業員の出退勤管理まで行える
個人に紐づくICカードキーで入退室管理が行えるため、入退室するだけで客観的な記録による出退勤管理を行うことができます。入退室管理システムのなかには、そのほかの様々なシステムと連携できるものもあるため、勤怠管理からさらには会員管理や予約管理などの各種手続きを効率化できるものもあります。
入退室の記録を他の様々なシステムにも活用することで、会議室や来客スペースの入退室の管理と、スムーズかつ効率的な施設関連業務に生かすことが可能です。
業務効率化により運営コストを抑えられる
入退室管理システムには導入費用がかかりますが、削減できるコストもあります。たとえば人件費がそのひとつ。24時間入退室を管理できるため、ICカードキーを持たない人や許可のない人はオフィスに入ることができません。このため、警備員や受付の人員を雇う人件費を抑えることができます。 また、物理的な合鍵が不要になるので、合鍵の作成費用や紛失時のリスクを軽減することができ、バックオフィスの鍵管理のための業務工数や人件費を軽減することもできます。
入退室管理システムのデメリット
入退室管理システムの導入にはデメリットもあります。確認しておきましょう。
ICカードキーを忘れると入室できない
入退室管理システムでは、多くの場合でICカードを鍵として使用しますが、万が一、利用者がICカードキーを忘れた場合は入室や記録ができません。
この場合は、オフィスにいるメンバーに連絡することで入室できますが、勤怠の記録などは別途システムで申請をする必要があります。
しかし、例えばクラウド型の入退室管理システムであれば、ICカードキーを忘れた際にも一時鍵発行の申請などはPC上で行うことができるため、管理者の負担を軽減することができます。
導入時に多額の費用がかかる場合がある
入退室管理システムの導入には大なり小なり費用が発生します。費用は設置や機器購入などにかかる初期費用のほか、システムの継続利用、メンテナンス、電気代などのランニングコストがあります。
特に、大掛かりな工事が必要な入退室管理システムの場合、機器費用、工事費用、システム設定費用(エンジニア費用)、ネットワーク工事費用など、1つのドアあたり初期費用が100万円を超える場合もあります。
さらに、賃貸で入居するような場合には、退去時に原状回復のための費用も必要になります。
工事が必要なケースや利用開始までに時間がかかる場合がある
入退室管理システムの種類によっては、ドアや壁に工事を行う必要があります。オフィスビルに賃貸契約で入居しているような場合では、
共用部分に手を加えることができず導入できないこともあり、また工事できたとしても申請〜許可〜工事までに多くの時間と工数がかかる場合があります。
ただ、入退室管理システムのなかには、スマートロックのように工事不要で簡単に取り付けられるものもあります。コストを抑えたい場合には、工事不要のものを選ぶのがおすすめです。
入退室管理システム導入時の考えるべきポイント
入退室管理システムを導入する際には、「どのタイプの入退室管理システムを利用するか」を考える必要があります。
検討の際には、まず以下の3つのポイントを考えてみてください。
- 設置場所をどこにするか
- オンプレミス型かクラウド型か
- 費用(予算)をどのくらいかけるか
それぞれについてチェックすべきポイントの詳細を見ていきましょう。
設置場所をどこにするか
入退室管理システムを導入するなら、設置場所を決める必要があります。一般的には以下のような場所に設置されます。
主に設置される場所の例
- オフィスビルの出入口
- オフィスビル内、各階の執務室への出入口
- 来客用スペースから執務室への出入口
- 機密情報などが保管されている部屋の出入口
- 会議室や役員室などの機密性が必要とされる部屋の出入口
設置場所はオフィス環境や会社の規模、使用目的によって考える必要があります。 そこで、設置場所に関して確認すべき点を以下の4つに絞って確認していきましょう。
- 賃貸ビルに入居している場合、ビルの利用規約や契約条件の制限がないか
- オフィスビルに備え付けのセキュリティシステムがあるかどうか
- ビルのオーナーや管理会社の許可が必要か
- 会社の規模やフロアの利用目的ごとの設置場所や必要台数
1.賃貸ビルに入居している場合、ビルの利用規約や契約条件の制限がないか
オフィスが賃貸ビルの中などにある場合、ビルの利用規約や契約条件を確認する必要があります。入口や廊下は共用部にあたり、入退室管理システムなどの導入が制限される場合があります。
入退室管理システムを導入する場合、設置場所に制限がないか確認しましょう。工事が必要な入退室管理システムを導入するケースでは特に注意が必要です。
2.オフィスビルに備え付けのセキュリティシステムがあるかどうか
オフィスビルにすでに別のセキュリティシステムが入っている場合、個別に入退室管理システムを導入しても問題がないかの確認も必要です。
ビルのセキュリティシステムの適用範囲はビルの入口のみなのか、各フロアごとにあるのか、テナントごとについているのか、などを確認しましょう。
すでにビルにセキュリティシステムがあっても、専有部など設置場所によっては新たに個別に入退室管理システムを導入しても特に問題がないこともあります。
セキュリティシステム同士の干渉や重複が生じないよう確認を取ったうえで、導入することをおすすめします。
3.ビルのオーナーや管理会社の許可が必要か
壁やドアに穴を開けるなどの大掛かりな工事が必要な入退室管理システムを導入する場合は、必ず管理会社に連絡して、ビルのオーナーの承諾を得ましょう。
賃貸では原状回復が条件となるケースが一般的です。オフィス移転などによってビルを退去する際、原状回復ができないと修繕代金を請求されたり、穴をあけた場所によっては問題になるケースがあります。
また、壁やドアに穴をあける位置によっては、建物の耐震構造に関わることもあるでしょう。
大掛かりな工事が必要な入退室管理システムを導入する場合は、必ずこれらの確認を行いましょう。
4.会社の規模やフロアの利用目的ごとの設置場所や必要台数
設置場所を考えるうえで、会社の規模やフロア、利用目的によって入退室管理システムの設置場所や必要台数を考える必要があります。
たとえば来訪者や商談が多い企業の場合、オフィスや執務室とは別にミーティングルームエリアを設ける場合があります。
この場合、ミーティングエリアと執務室の間に入退室管理システムを設置することで、来訪者に煩わしい入退室手続きを取らせずに済む場合もあります。
一方、個人情報を多く取り扱う企業では、各部署の部屋ごとに入退室管理システムを取り付けることで、情報セキュリティの強化や情報漏洩の防止が可能です。
自社で入退室管理システムを導入する目的を明確にして、必要な箇所に入退室管理システムを取り付けるとよいでしょう。
オンプレミス型かクラウド型にするか
入退室管理システムを導入する際には、オンプレミス型かクラウド型かを決めましょう。これはシステムの管理を誰がどのように行うかによって決めていきます。
オンプレミス型 | 入退室管理システムをビル内もしくは社内のサーバーにインストールして使用する方法 |
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クラウド型 | クラウド上にある入退室管理システムをWebブラウザなどを通じて使用する方法 |
オンプレミス型
オンプレミスとは、ビル内もしくは社内のサーバーに入退室管理システムのアプリケーションをインストールすることで利用する方法です。
入退室管理システムでデータを確認するには、社内から専用アプリケーションをインストールしたPCで見る必要があります。
アクセスできる環境が社内にしかないためセキュリティ的には堅牢ですが、物理的なサーバーが存在するので、災害や物理的な故障のリスクがあります。
また、外部からアクセスができないので、利用場所などが制限されることで管理者の業務負荷が高いというデメリットもあります。
さらに、定期的なメンテナンス、アプリケーションのアップデート、機器の老朽化による交換、利用者を追加したい場合の外注作業費用など、追加の費用がかかるケースもあるので注意が必要です。
クラウド型
クラウドとはクラウドサーバー上にある入退室管理システムをWebブラウザなどを通じて利用して、入退室管理を行う方法です。
クラウド型では、管理画面を見る場合は、PCやスマートフォンなどからブラウザを開き、IDやパスワードを入力してアクセスします。
このため、管理者側はわざわざオフィスへ行って専用PCを開かなくても、いつでも、どこでもブラウザから入退室履歴の確認や権限の変更作業、さらには遠隔での施錠・解錠などもすることができるものもあります。
また、クラウド上にデータがあるので物理的な災害や故障の影響を受けにくいというメリットもあります。
デメリットとしては、アカウントIDやパスワードを不意に管理者以外の人に知られてしまった場合、外部からアクセスできてしまう可能性があるという点ですが、
これは入退室管理システムに限らず、ビジネスなどで利用するサービス全般に言えることですので、アカウントIDやパスワードは厳重に管理するようにしましょう。
費用(予算)をどのくらいかけるか
入退室管理システムの導入で重要になってくるのが費用です。
入退室管理システムの導入費用には、設置にかかる初期費用とランニングコストの2種類があります。
初期費用
初期費用は主に、入退室管理システムの購入や設置にかかる費用です。
たとえばスマートロックを活用した入退室管理システムの場合、本体は購入の場合もあれば月額/年額によるレンタルのケースもあります。購入の場合は購入価格が初期費用になります。
また、取付工事が必要な入退室管理システムの場合は、工事費用、ネットワーク敷設費用、機器購入費用、初期設定のためのエンジニアの外注費などがかかります。
工事不要で取付可能なスマートロックを活用した入退室管理システムなどもあるので、初期費用を抑えたい方はこちらを選ぶとよいでしょう。
ランニングコスト
ランニングコストは、入退室管理システムの運用やメンテナンス費用などです。埋め込み型であれば電気代がかかりますし、外付けタイプであれば電池費用などもかかります。また、高いセキュリティを保つためには定期的なメンテナンスやアップデートも必要になるでしょう。
特にオンプレミス型の入退室管理システムでは、導入の初期費用だけでなく、導入後もソフトウェアやアプリケーションのアップデート費用、専用サーバーの老朽化による追加の機器購入費用、定期的なメンテナンス費用、さらには利用者の追加に伴う登録費用など、導入前には見えないコストが必要になる場合があります。
ほかにも、入退室履歴だけでなくそのほかの勤怠管理システムなどと連動する場合は、そちらのサービス使用料が追加でかかります。
これら導入前に考えるべきポイントは、入退室管理システムのホームページや問い合わせ窓口で確認することができます。自社で導入する場合の内容を具体的に知りたい方は、まずは問い合わせ窓口から確認してみるとよいでしょう。
まとめ
入退室管理システムとは、日々の入退室をスムーズにし、利用者の日々の利用体験を改善できることやセキュリティを強化するだけでなく、ニーズに応じて勤怠管理や予約管理、会員管理などにも利用できる便利なものです。
導入に際しては自社の導入目的や利用環境、予算などに応じて、最適な入退室管理システムを選び、安全で快適なオフィスづくりに役立てるとよいのではないでしょうか。