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はじめに
日本でも広く導入されるようになったフレックスタイム制。フレックスタイム制は、所定時間内であれば、始業時間と退勤時間を従業員が自由に設定できるシステムです。
では実際に、フレックスタイム制の運用から数年たった企業では、どのような効果が生まれ、一方でどんな問題点があり、どのような対策が必要なのでしょうか。
この記事では、日本企業におけるフレックスタイム制のメリットや課題などについて、分かりやすく解説していきます。
- フレックスタイム制(スーパーフレックスタイム制)の仕組み
- フレックスタイム制導入後の働く人の声
- フレックスタイム制導入のメリット・デメリット
- フレックスタイム制導方法と対策
- フレックスタイム制におすすめな人材管理とセキュリティシステム
フレックスタイム制の導入をご検討されている方や、フレックスタイム制のオフィス・人材管理に課題を抱えている方は、この記事をぜひ参考にしてください。
図説一目でわかるフレックスタイム制度
フレックスタイム制とは、従業員がその日ごとに出勤時間(始業時間)と退勤時間(終業時間)を都合に合わせてフレキシブルに決定できる勤務形態です。
フレックスタイム制では1か月などの単位で最低労働時間数が定められており、たとえば月176時間以上という定めがあれば、そのなかでこの日は遅く出勤する、この日は早く退勤するなど、出退勤時間を自由に設定することが可能です。
またフレックスタイム制には、1日のなかでこの時間帯だけは必ず全員勤務するというコアタイムを定めたフレックスタイム制と、24時間いつでも出退勤を各自が決められるスーパーフレックスタイム制の2種類があります。
フレックスタイム制でもスーパーフレックスタイム制でも1日の所定労働時間が定められています。また、労働基準法に則り、8時間以上の労働は残業になり、休憩時間も8時間以上の労働で1時間、6時間以上の労働で45分設定する必要があります。
フレックスタイム制に向いている職種・向いていない職種
フレックスタイム制に向いている職種、向いていない職種は一般的な就業時間帯に社内外でのコミュニケーションが必要かどうかが鍵になります。就業時間に顧客や取引先、社内の人とのコミュニケーションが必要な場合は、従来の業務時間に勤務しているほうが業務が回りやすいでしょう。
向いている職種 | 個人の裁量で業務効率が上がる専門職や稼働時間が一般的な就業時間に限られない職業 | エンジニア、プログラマー、事務、研究職、設計業務、企画職、マスコミ関係など |
向いていない職種 | 顧客と常に連絡が付く必要性のある営業職、外注対応がメイン業務のディレクター、総務・人事など一般的な就業時間にコミュニケーションが必要な人 | 営業、総務、社外企業とのやり取りが多い職種など |
ただし、一般的な就業時間に社内外とのコミュニケーションが必要な職種であっても、適切なコアタイムを設けることでフレックスタイム制に適応することが可能です。
フレックスタイム制導入の実態と効果
厚生労働省の調査によると変形労働時間制を導入している企業は全体の半数以上ありますが、この中には1年単位や1か月単位の変形労働時間制も含まれており、フレックスタイム制を導入した割合のみを見てみると令和2年は6.1%、令和3年は9.5%とまだまだ低い水準でした。
しかし、令和2年から令和3年で3.4%上昇しており、フレックスタイム制を導入し始める企業が増えていることが分かります。
出典:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査」(令和3年11月9日発行)
さらに令和3年のフレックスタイム制を導入している企業の規模別(従業員数別)の割合は、以下の通りです。
出典:厚生労働省「令和3年就労条件総合調査」(令和3年11月9日発行)
こちらの図で分かる通り、令和3年にフレックスタイム制を導入している企業は従業員数1,000人以上の企業が半数を占めており、次いで300〜999人の企業が4分の1以上を占めています。
この結果から、フレックスタイム制を導入している企業は、ある程度の規模の企業が導入していることが分かります。
その理由としては、企業がまだ拡大フェーズに入っていない段階では社内外との密なコミュニケーションが重要であり、社員同士はもとより、顧客や取引先へのリアルタイムな対応を減らしたくないという傾向があるためだと考えられます。
一例として、スタートアップ企業ではあえてはじめからフレックスタイム制を導入し、働き方の多様性を重視し、採用のためのアピールポイントとしている企業もあります。しかし、多くの企業、特に中小企業では事業体制そのものが十分に整っていないなどの理由から、まだまだフレックスタイム制を導入している企業が少ない傾向にあるようです。
フレックスタイム制を導入した企業の社内の声
フレックスタイム制を導入した企業で働く人の声をまとめました。
- 従業員の労働時間管理が難しくなった一方で、細かな管理を意識するようになった
- 出退勤のラッシュ時間をずらせるので通勤が楽になった
- 家事や育児、介護と仕事の両立がしやすくなった反面、仕事を理由に避けることができなくなった
- 仕事の忙しさに合わせて調整できたり、プライベートの用事で早く帰れるので便利になった
- 体調がすぐれないときなどに無理に仕事せず、調子のいいときに集中するなどメリハリをつけて仕事できるようになった
- 勤務時間のすれ違いで上司の承認を取るのに時間がかかることがある
- 日報を社内共有するようになって、ほかの人の仕事が見えるようになった
あくまでこれは一部の声ですが、効果を実感できる一方で課題もあるようです。では、フレックスタイム制を導入するとどのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。次章でご紹介します。
フレックスタイム制のメリット・デメリット
フレックスタイム制導入にはどのような効果があり、課題があるのでしょうか。ここではフレックスタイム制導入のメリットとデメリットそれぞれについてお伝えします。
フレックスタイム制導入のメリット
フレックスタイム制導入の大きなメリットとしては、以下の2つが挙げられます。
- 多様な働き方を受け入れることによる採用率のアップと離職率の低下
- 非効率な時間の使い方や残業を削減できる
離職率の低下、採用率のアップにつながる
フレックスタイムにすることで、従業員ひとり1人のワークライフバランスが取りやすくなり、従業員の精神的、身体的健康維持にも効果が期待できます。
働きやすい職場は従業員のモチベーション向上につながり離職率を低下させ、多様な働き方を受け入れている姿勢を表明することで採用にもよい効果が期待できるでしょう。
非効率な時間の使い方や残業を削減できる
フレックスタイム制を導入すると個人のモチベーションが上がるだけでなく、必要な時間に必要なリソースを充てることができるため、業務の効率化や生産性の向上が期待できます。
たとえば、夕方に届く予定の取引先からの返事を受けて業務を行うような場合、その日は勤務時間を全体的に後ろにずらすことで、無駄な残業を減らすことができます。
フレックスタイム制導入のデメリット
一方でフレックスタイム制にはデメリットもあります。懸念される主なデメリットは以下のようなものです。
- 勤務時間の入れ違いによるコミュニケーション不足の問題
- 人材管理やオフィス管理が多様化することによる業務の増加
勤務時間の入れ違いによるコミュニケーション不足の問題
フレックスタイム制にすることで、一般的なビジネスタイム内で不在にする時間が出てきます。取引先や顧客からの問合せにすぐ対応できず、信頼を損なってしまう恐れがあるかもしれません。
また、関係する社内の同僚とコミュニケーションが取れない時間帯も生まれます。コミュニケーションが取れないことで業務の進捗が遅れたり、確認が取れずに進めた作業がトラブルにつながる恐れもあるでしょう。
人材管理やオフィス管理が多様化することで、複雑化
フレックスタイム制にすると、出退勤管理が従来のシステムで行えず、個人の管理能力に依るところが大きくなることもあるでしょう。
同じ会社でも職種によってフレックスタイムの取りやすさに差があると、従業員の不満につながり、従業員の満足度にも差が出ることがあるかもしれません。
また、オフィスの入退室時間がバラバラになるため、施錠管理などのオフィスセキュリティの問題も出てきます。このようなデメリットにはどのような対策が必要なのか。次章で解説します。
フレックスタイム制導入における5つのポイント
フレックスタイム制を導入する際は、以下の5点を考える必要があります。
1:適切なコアタイム・フレキシブルタイムの設定
2:出退勤管理や報告・共有しやすいシステムの導入
3:オフィスのセキュリティ対策
4:就業規則を明確にする
5:労使協定を締結する
1:適切なコアタイム・フレキシブルタイムの設定
適切なコアタイムとは「従業員がそろっているのが望ましい時間帯」です。コアタイムは絶対に設置しなければならないものではないので、職種によって適切なコアタイムが大きくずれる場合には、あえてコアタイムを作らないという選択もあるでしょう。
- 顧客にとって利便性の高い時間帯
- 取引先の就業時間内で、もっとも多くやり取りが発生する時間帯
- 複数の取引先の営業時間が重複する時間帯
- 一般的な会社の営業時間の真ん中あたりの時間帯
- 提供するサービスや作業時間が決まっている場合はその時間帯
上記を踏まえたうえで、職種によって業務が発生しそうな時間をフレキシブルタイム/コアタイムで網羅することが大切です。
2:出退勤管理や報告・共有しやすいシステムの導入
フレキシブルタイム制にすると、従業員の出退勤の時間が不明確になりがちです。また、勤務時間の差によって情報共有が難しくなることも懸念されるため、出退勤管理システムや情報を共有したり報告し合えるシステム・ツールを導入するとよいでしょう。
3:オフィスのセキュリティ対策
フレックスタイム制を導入すると従業員の出退勤時間がばらつくため、施錠管理が難しくなります。施錠を忘れてしまうと情報漏洩や空き巣被害など、企業にとって大きな損害につながる恐れがあります。
また、出社しても鍵の管理担当者がフレックスで出勤しておらず、せっかく早く出社したのに会社に入れなかったという従業員が出てくるかもしれません。
かと言って物理的な合鍵を複製し、社員に配布するのは、セキュリティやコスト面からもリスクが高いという問題があります。
このようなリスクを回避するためには、スマートロックを利用してオフィスのセキュリティ対策をするのがおすすめです。スマートロックとは鍵を使わずICカードや社員証、スマホアプリなどで鍵の施解錠を行うシステムです。施解錠方法、設置方法、管理方法にさまざまな種類があるので、自社に最適なスマートロックを選ぶとよいでしょう。
オフィスに最適なスマートロック選びのコツ
4:就業規則を決定し労働基準監督署に届け出る
フレックスタイム制を導入する際、社内で完結するのではなく、就業規則を策定し、労働基準監督署に届け出る必要があります。
就業規則を定める際には、1か月あたりの総労働時間や1日の最長/最短労働時間なども明確に定めます。労働基準法に則り、8時間以上の労働で
1時間、6時間以上の労働で45分の休憩も明記してください。また、遅刻や早退のルールについても明記しておく必要があるでしょう。
5:労使協定を締結する
労働基準監督署への届出と併せて、忘れてはいけないのが労使協定の締結です。労使協定は、労働組合(労働組合がない場合は従業員の過半数の代表者)と企業が締結するもので、内容は主に以下の内容になります。
- 対象労働者の範囲(全員または特定の職種など)
- 清算期間(いつからいつまで起算日と期間を1か月以内で決定)
- 清算期間における総労働時間
- 時間外労働の基準(1日の所定労働時間を設定)
- コアタイムとフレキシブルタイム(任意)
この他、就業規則なども策定する必要があります。また、フレックスタイム制によって従業員間で不満が生まれないよう、定期的な人事面談などを行い、従業員にヒアリングを行い、適切な勤務体系を整えていくことも大切です。
フレックスタイム制の導入には、企業によって異なる課題が出てくる可能性もあります。導入後も従業員にヒアリングを行うなど、トライアンドエラーを重ねていくことで、会社にとって効果的な制度へと成長させることができるでしょう。
Akerun入退室管理システムなら人材管理とセキュリティ対策が同時にできる
フレックスタイム制を導入する際、課題の1つとなる労務管理と防犯に対して、スマートロックを活用したクラウド型入退室管理システム「Akerun入退室管理システム」を利用すれば、退室管理だけでなく勤怠管理システムとの連携による労務管理も行うことができます。
- ICカードやスマートフォンでドアの施錠解錠が可能に
- 貼り付けるだけの簡単後付け設置でオフィスのドアをスマートロック化
- クラウド管理でいつでも、どこでも入退室のログを確認できる
- 工事不要で設置可能なので、賃貸オフィスでも原状回復の心配なし
- 既存の勤怠管理システムと連携させて労務管理もできる
フレックスタイム制を導入する際は、入退室管理、労務/勤怠管理、セキュリティ対策などを同時解決できるAkerun入退室管理システムの導入をぜひご検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
フレックスタイム制は業務効率を上げると同時に、従業員がワークライフバランスを取りやすくなる有効な制度です。ただし、適切に導入しないと逆に生産性の低下や社員の不満、さらにはオフィスセキュリティにまで問題が発展する恐れがあります。
まずは自社にとってフレックスタイム制を導入するメリットがあるのかどうかをしっかり検討することが大切です。そのうえで適切なコアタイムを考え、必要な管理システムや情報共有ツール、セキュリティシステムの導入を検討するとよいでしょう。
上手く導入できればさまざまなメリットのあるフレックスタイム制。生産性アップと社員の満足度向上のためにぜひ導入してみてはいかがでしょうか。
さらにフレックスタイム制と裁量労働制の違いについて知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
【3つのポイントで見る】フレックスタイム制と裁量労働制の違いとは