【2024年4月から施行】医師の働き方改革とは?取り組むべき対策も解説!

2023年09月29日
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はじめに

2024年4月から、医師にも時間外労働の上限規制が適用されます。これまで医療機関は大掛かりな勤務環境の改善を要するため、5年の猶予が設けられていました。

しかし、医療機関には、様々な職種の職員が在籍すること、その性質上24時間対応が必要になることなどから、医師や看護師等の労働時間については一般の企業よりも複雑であるため管理することは難しい状況でした。

そこでこの記事では、「医師の働き方改革」で、医療機関の人事労務担当者がおさえておきたいポイントを整理して、法令に則った労働環境や勤怠管理を実現するためのシステムについて解説します。

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医師の働き方改革とは

医師の働き方改革を推進する背景には、医療機関における医師の長時間労働の常態化と、業務内容の性質上、医師の休日確保が困難であるという問題があります。これにより、睡眠時間や休息のための時間が不足し業務遂行力や判断力の低下や医療事故が起こるリスクが懸念されています。

また今後、少子高齢化の進展により人口が減少する社会の中で、医師においても人手不足が加速して労働力の確保が難しくなる問題があります。 現状では、特に20代〜30代の医師を中心に長時間労働が常態化(※)しており、病院常勤勤務医の労働時間に関しての厚生労働省の実態調査によると1週間あたり60時間〜70時間(※)勤務している医師が全体の18.9%に上るなど、労働基準法で定められた週40時間を大幅に超過して勤務している医師が一定数います。

さらに近年は、医師不足に加えて、団塊の世代が75歳を迎える2025年には医療介護へのニーズが大きく増加することも予測されています。そんな状況のなか医師には、進歩する医療技術への対応、患者へのきめ細やかなケアなども求められています。

良質かつ適切な医療を効率的に提供するための人材や環境を確保することで、医師の働き過ぎを抑制し、体調が万全な医師に診察してもらうことで、医療の質を上げながら医療事故を減らし、そして必要な医療人員を確保することにもつながります。 こういった背景から、医師法や医療法などの関連法制を改正し、「医師の働き方改革」に取り組むことになりました。
※出典:厚生労働省「医師の長時間労働の実態について」

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医師を対象とした「時間外労働の上限規制」とは

労働基準法では「1日8時間・週40時間(※1)」が法定労働時間となり、これを超える労働は「原則禁止」されています。しかし、労使間で36協定を締結し届出すれば、例外として法定時間外労働が許されます。さらには特別条項を設けることで上限なしの時間外労働が可能となっていました。そのため2019年の法改正により、いかなる事情があっても上回ることのできない罰則付きの上限が設けられました(※2)。これを「上限規制」と呼んでいます。

この上限規制は、一般企業ではすでに施行されており、医師も2024年4月1日から対象となります。

ただし、医師に対する時間外労働の上限は、その業務上の特性から一般企業とは異なり、次のように3つの水準に応じた上限と、それに伴う健康確保措置が求められることになります。

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A水準:診療に従事するすべての医師が対象(他の水準に当てはまらない医療機関が全て該当)
B水準:地域医療暫定特例水準(救急医療機関や救急車の受け入れが年間1,000台以上の医療機関などが該当)
C水準:集中的技能向上水準(研修などを行う医療機関)


それぞれの水準で定められた月の時間外労働時間が上限時間を超える場合、面接指導と就業上の措置はA水準・B水準・C水準とすべてのケースで義務とされます。健康確保措置については、A水準では努力義務、B水準、C水準では義務(※3)とされます。

健康確保措置とは、月の時間外労働時間の上限時間を超えて労働する医師に対して、28時間の連続勤務時間制限を設け、さらに勤務間インターバルを9時間確保または代償休息をセットとする(※3)ものです。 このように各医療機関は、医師の長時間労働に依存してきたこれまでの体制を見直し、職場環境を変革することを迫られています。
※1 出典:厚生労働省「労働時間・休日」
※2 出典:厚生労働省「時間外労働の上限規制|働き方改革特設サイト」
※3 出典:厚生労働省「医師の働き方改革について」

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医師の働き方改革に向けて取り組むべきこと

医師の働き改革に対応するために、医療機関は徹底した労務管理を行う必要があります。しかし、医師の労務管理には課題が多く、正確な労働時間の把握が難しいのが現状です。 医師の労務管理における課題は、主に次の5つです。

  • 勤務時間の客観的な時刻の記録がない場合がある
  • 患者を優先して過重労働になる場合がある
  • 労働時間と自己研鑽時間の区別がつきにくい
  • オンコールや宿直の場合、何回の呼び出しがあったか管理しづらい
  • 副業や兼業を行う医師も多く、勤務実態の全容が把握しづらい

医療機関の勤務形態は一般企業に比べて複雑になることに加えて、勤務時間の管理は従来型の手書きで行われることが多くあります。手書きの勤怠情報を各種データと照らし合わせて勤務状況を確認する作業は手間がかかったり、入力漏れや入力間違いといったヒューマンエラーが発生しやすいというデメリットがあります。

また、入力/記録する医師の判断や記憶違いなどにより正確な勤怠時間が申告されない恐れもあります。このため、労務担当者は、労働時間の集計作業や確認作業だけで多大な労力と時間が必要になったり、給与計算にも支障が出る可能性があるでしょう。

また、医師の時間外労働に関しては、医師本人の申告のみで客観的なデータがない場合、労務担当者が勤務実態を把握できないのも問題です。また、当直や宿直、オンコールなど特殊な勤務体制も労務管理が複雑化する要因となっています。

特に医師が長時間労働せざるを得ない宿日直も、勤務日の状況や勤務先によって勤務実態が大きく異なります。ほとんど実働がない日もあれば、救命救急センターのように一晩中実働が求められる医師もいます。

また、医師の中には副業や兼業を行っている人も多くいます。主たる勤務先は、派遣先における勤務も含めて、時間外労働や休日労働の上限、連続勤務の時間制限、勤務間インターバルを遵守したシフトを組まなければなりません。この場合は、正確な労働状況の把握と医師との話し合いが必須となります。

医療機関がこのように複雑な働き方を行っている医師の勤務実態を正確に把握する手段として、まずは医師の労働状況を客観的に記録する必要があります。例えば、勤怠管理システムを活用してタイムレコーダーやスマートフォン(以下、スマホ)から出勤・退勤時間を記録するといった運用がおすすめです。

医師の勤怠管理においては、まず従来の紙やエクセル(Excel)による勤怠管理からの脱却が必要です。これらの方法では、労務担当者が月締め処理をすることで初めて実際の労働状況を把握することになるため、「気付いたら上限規制の基準を超えて労働していた」という状況になりかねません。

そのためにも、まずは客観的で正確な労働時間の記録を行い、労働状況をリアルタイムに把握・確認できる仕組みを作ることが医師の働き方改革におけるスタートラインと言えます。 「医師の働き方改革に関する検討会(※)」は、医師の時間外労働を短縮するために、次の6つの取り組みを各医療機関が行うよう周知を図っています。

①医師の労働時間管理の適正化に向けた取り組み
②36協定等の自己点検
③既存の産業保健の仕組みの活用
④タスク・シフティング(業務の移管)の推進
⑤女性医師等に対する支援
⑥医療機関の状況に応じた医師の労働時間短縮に向けた取り組み


①医師の労働時間管理の適正化に向けた取り組み

労働時間短縮に向けた取り組みを行う上で労働状況の把握は重要であるとしています。まずは医師の在院時間の客観的な把握のために、ICカードやタイムカードを導入して出退勤時間の記録を上司が確認するなどの対策が必要です。

②36協定等の自己点検

医師の労働時間を把握したら、まず36協定を締結しているかどうか、また36協定の内容が適切かを確認しましょう。特に、業務や職種ごとに適切な定め方になっているかの確認は重要です。そして、36協定で定められた限度時間を超える時間外労働はどのくらい起きているのかを確認しましょう。医師を含めた医療従事者の時間外労働時間数について自己点検と見直しを行い、36協定の適用対象となっている医師に対して36協定を周知することも重要です。

③既存の産業保健の仕組みの活用

医師に対して既存の産業保健の仕組みが十分に活用されていない現状を踏まえて、産業保健の仕組みを活用して、長時間勤務となっている医師、あるいは診療科ごとに対応策について話し合いましょう。

④タスク・シフティング(業務の移管)の推進

タスク・シフティングは、医師の業務負担の軽減を図るため、医師以外の他職種へ業務の移管を推進するものです。検査手順の説明や入院の説明、診断書の入力などは医師以外の職種が分担して実施することで、医師の業務負担を軽減します。その際、各種ツールを用いて業務効率を上げることで医師の負担を軽減することにもつながるでしょう。

⑤女性医師などに対する支援

女性医師に対する支援では、出産、育児、介護などによってキャリア形成が阻害されないように、短時間勤務などの柔軟な働き方を推進します。

⑥医療機関の状況に応じた医師の労働時間短縮に向けた取り組み

各医療機関ごとの状況に応じた医師の労働時間短縮に向けた取り組みとして、勤務時間外に緊急でない患者の病状説明等の対応を行わないことや当直明けの勤務負担の緩和、複数主治医制の導入などを積極的に検討・導入するように促されています。
※出典:厚生労働省「医師の労働時間短縮に向けた緊急的な取組|医師の働き方改革に関する検討会」

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医療機関の「適正な勤怠管理」できる勤怠管理システム

まず最初に「医師の労働時間管理の適正化に向けた取り組み」で挙げた医師の勤務時間を客観的に把握する体制を作りましょう。そのために、勤怠管理システムを導入することをおすすめします。これは、従来の紙やエクセル(Excel)で勤怠管理を行っていた業務の効率化にも繋がります。また、クラウド型の勤怠管理システムであれば、クラウド上に保存された医療従事者の勤怠記録を時間や場所を問わずリアルタイムに把握・管理できます。

医師の労働時間を把握するために勤怠管理システムを選ぶ際の主なポイントは、次の4つです。

  • 自院に合った打刻方法が備わっているか
  • 医師の特殊な勤務形態の勤怠管理を正確に記録・管理できるか
  • 時間外労働時間の上限を超えないような機能または上限を超えそうな場合に通知・警告してくれる機能などがあるか
  • 給与計算システムや入退室管理システムなどと連携できるか

自院に合った打刻方法が備わっているか

医師の業務の特性に合わせて打刻方法を選べるものであれば、医師や看護師が訪問診療や訪問介護などで外出・直帰するような場合や主たる勤務先以外での勤務している場合でも、勤怠打刻のデータを客観的に残すことができます。例えば、ICカードだけでなくスマホでも出退勤の打刻ができるものであれば、医師の様々な勤務状況にも柔軟に対応できるでしょう。

医師の特殊な勤務形態の勤怠管理を正確に記録・管理できるか

医師の複雑なシフト管理や特殊な勤務形態の記録・管理、オンコールなどの突然の業務にも対応できるかどうかも重要です。医師が当直、外勤、中抜けなど、複雑な勤務形態も細かく設定できたり、残業・休暇の申請・承認もできる機能があれば、医師だけでなく労務担当者の利便性が高まり、正確な勤怠状況の把握や業務効率化につながります。

時間外労働時間の上限を超えないような機能または上限を超えそうな場合に通知・警告してくれる機能などがあるか

医師の時間外労働の上限を超えないようにするには、正確な勤怠状況をリアルタイムに把握・管理して時間外労働時間を常に把握・確認する必要があります。 万が一、時間外労働時間の上限に近づいた医療従事者に事前に警告するアラート機能などがあれば、定められた時間外労働時間を超えないようにシフト調整をして、体制を整えることができます。

給与計算システムや入退室管理システムなどと連携できるか

勤怠管理システムと給与計算システムを連携させれば、勤怠情報を使って自動で給与計算ができるため、給与計算の際の入力ミスや入力間違いなどヒューマンエラーを防止できます。

また、勤怠管理システムだけでは、打刻漏れや打刻忘れ、打刻の改ざんのリスクもあります。このリスクを減らすために、入退室管理システムと連携すれば、医局や更衣室、休憩部屋などの特定の部屋への入退室履歴を客観的な勤怠打刻として記録できるため勤怠管理を効率良く行えます。このように外部システムと連携すれば、正確な勤怠状況を把握できたり、業務負担を軽減できるなど、医師の時間外労働の短縮に向けた取り組みをサポートしてくれるでしょう。

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勤怠管理も効率的に実施できるAkerun入退室管理システムがおすすめ!

勤怠管理をさらに効率的かつ客観的に行うには、Akerun入退室管理システム(以下、Akerun)と勤怠管理システムを連携させて活用することがおすすめです。Akerunは、ICカードやスマホ、顔認証など様々な解錠方法で施錠・解錠し、ドアが閉まると同時にオートロック機能により自動で施錠できるスマートロック型の入退室管理システムです。Akerunを導入すれば、入退室の際にクラウド上に記録される入退室履歴/ログを勤怠管理システムに連携させることができ、より効率的かつ客観的な勤怠管理ができます。

Akerunには、主に以下のようなメリットがあります。

  • APIを使って勤怠管理システムと連携して、勤怠管理業務を効率化できる
  • Akerunの「タイムカード機能」を使って従業員の勤怠管理に役立てられる
  • セキュリティ強化と鍵管理の効率化を図れる

APIを使って勤怠管理システムと連携して、勤怠管理業務を効率化できる

Akerunは、APIを使って外部の勤怠管理システムと連携できます。これにより、医師が院内の特定の部屋に入退室する際に入退室の履歴/ログを記録すると同時に、取得した入退室履歴を勤怠打刻として活用できるので、従来のような紙やタイムレコーダーなどで勤怠管理をしていた場合にかかっていた手間や時間を省けるため、勤怠管理業務を効率化できます。

また、医師が当直や宿直をした際も診察室などの特定の部屋にAkerunを設置し、入退室の履歴を取ることで正確な労働時間をリアルタイムに記録・管理できるため、時間外労働時間を超えるリスクを防止できます。

Akerunの「タイムカード機能」を使って医療従事者の勤怠管理に役立てられる

Akerunは、入退室管理だけでなく、入退室の履歴に基づいて毎日の最初の入室時間と最後の退室時間をレポートしてくれる「タイムカード機能」も備えているため、客観的な労働時間を簡易的に記録でき、勤怠管理に役立てられます。医師や看護師など医療従事者一人ひとりの勤怠記録をWeb管理ツールやスマホ専用アプリでいつでも確認・把握できます。

セキュリティ強化と鍵管理の効率化を図れる

Akerunを導入すれば、勤怠管理業務の効率化だけでなく、医療機関におけるセキュリティも強化できます。  Web管理ツールやスマホ専用アプリを使ってクラウド上から利用者の解錠デバイス(ICカードやスマホなど)に解錠権限を付与して入室制御を行えるため、セキュリティを強化できます。また、オートロック機能により鍵の閉め忘れも防止できます。

これにより、医療従事者しか入れないエリアなどへの部外者の入室を制限でき、不法侵入の防止にもつながります。また、物理的な金属の鍵を複製する手間やコストを削減できるとともに、鍵の紛失・盗難などのリスクもなくなります。Akerunは、労働時間の客観的かつ正確な記録だけでなく、セキュリティ強化と鍵管理の効率化にもつなげられます。

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まとめ

2024年4月から、医師にも時間外労働の上限規制が適用されます。しかし、医療機関における医師の現状は、長時間労働の常態化や医師の休日確保が困難であるため、睡眠時間や休息が不足して業務遂行力が低下したり、医療事故が起こるリスクがあります。さらに今後の少子高齢化なども見据えて、医療機関は医師の働き方を大きく見直す必要があるでしょう。

医師の働き方改革のための手段の一つとして、勤怠管理システムを導入して医師の労働時間を客観的に把握・管理することがおすすめです。医師や看護師が訪問診療や訪問介護などで外出・直帰するような場合や、オンコールや宿直などの緊急時でも、勤怠の打刻データを客観的に残すことができます。

また、勤怠管理システムと入退室管理システムであるAkerunを連携させれば、入退室履歴を活用して勤怠管理を効率化できます。Akerunだけでも、客観的な労働時間を簡易的に記録できるため、おすすめです。ぜひ、医師の働き方を見直す際に、Akerunの導入も検討してみてください。



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