勤怠管理
著者:
西村幸
公開日:
更新日:
2026年7月23日

労働基準法によって作成と保存が義務付けられている「出勤簿」。
近年の働き方改革関連法の施行により、企業には従来以上に厳格な労働時間の把握が求められるようになりました。
なかでも「客観的な労働時間の記録」をどう担保するかは、あらゆる企業の労務管理部門にとって避けて通れないテーマとなっています。
さらに2020年4月の労働基準法改正では、出勤簿を含む労働関係書類の保存期間が「3年」から「5年」へと延長され(経過措置として当面3年)、実務上のインパクトも小さくありません。
本記事では、「出勤簿とは何か」という基本の定義から、必ず記載しなければならない必須項目をまとめています。
またExcelや紙の管理からクラウド化へ移行するための実践ポイントまで、最新の法令に沿って整理してお届けします。
出勤簿とは、労働者一人ひとりの日々の労働時間や出退勤の実態を記録するための帳簿です。
単なる社内の管理資料ではなく、労働基準法によって作成・保存が明確に義務付けられている、法的な帳簿であるという点が最大の特徴です。
労働基準監督署による調査(臨検監督)が入った際にも真っ先に確認される書類のひとつであり、記載不備や未作成は労働基準法違反として指摘対象となります。
出勤簿は、労働基準法上、以下の3つの帳簿からなる「法定三帳簿」の一角を成しています。
法定三帳簿 | 概要 | 根拠条文 |
労働者名簿 | 労働者の氏名・生年月日・雇入年月日などを記録する帳簿 | 労働基準法第107条 |
賃金台帳 | 賃金の計算基礎・支払額などを記録する帳簿 | 労働基準法第108条 |
出勤簿等 | 労働日ごとの始業・終業時刻など労働時間の実績を記録する帳簿 | 労働基準法第108条・第109条ほか |
法定三帳簿は、労働者を1人でも雇用しているすべての事業者に対し、業種・規模を問わず作成と保存が義務付けられています。
「うちは従業員が数名だから不要」というケースは存在しません。
労働基準監督署の調査時に必ずチェックされるポイントであるため、日頃から正確に運用しておくことが求められます。
出勤簿の保存期間は、2020年4月の労働基準法改正により、従来の「3年」から「5年」に延長されました(労働基準法第109条)。
ただし経過措置として、当分の間は3年の保存でも問題ないとされています。
保存期間の起算日は、その出勤簿における最後の記入日が原則です。ただし、賃金の支払日が最後の記入日より後になる場合は、賃金の支払日が起算日となります。
未払い残業代の消滅時効も従来の2年から段階的に延長されており、実務上は「経過措置中でも5年分を保存しておく」運用が強く推奨されるようになっています。
決められた保存期間を守らずに廃棄した場合、労働基準法違反として30万円以下の罰金が科される可能性がある点にも留意が必要です。
出勤簿を法定帳簿として成立させるためには、単に「来た・帰った」を書き留めるだけでは不十分です。
厚生労働省のガイドラインおよび労働基準法施行規則に基づき、以下の項目を過不足なく記載する必要があります。
必須記載項目 | 内容 | ポイント |
氏名 | 労働者の氏名 | 労働者名簿と紐づけて特定できる状態にする |
出勤日 | その労働者が実際に出勤した日 | 欠勤日・休日出勤も区別して記録 |
出勤日ごとの労働日数 | 月ごとの労働日数 | 給与計算・有給付与判定の基礎となる |
始業時刻・終業時刻 | 労働日ごとの始業および終業の時刻 | 客観的な記録が原則(後述) |
休憩時間 | 労働日ごとに取得した休憩時間 | 6時間超で45分、8時間超で60分以上が法定 |
時間外労働の時間数 | 法定労働時間を超えた時間 | 割増賃金計算の基礎データとなる |
休日労働の時間数 | 法定休日に労働した時間 | 割増率が高いため個別集計が必要 |
深夜労働の時間数 | 22時から翌5時までの労働時間 | 深夜割増賃金の対象時間 |
これらの項目が一つでも欠けていた場合、「客観的に労働時間を管理していない」と判断されるリスクがあります。
特に始業・終業時刻は、いわゆる「タイムカードの打刻時間」だけでは足りず、実際の労働の実態と一致していることが求められる点に注意が必要です。
2019年4月に施行された働き方改革関連法により、労働安全衛生法が改正され、すべての企業に「客観的な方法による労働時間の把握」が義務化されました。
管理監督者や裁量労働制の適用者を含む、原則すべての労働者が対象です。
この改正のポイントは、単に「時間を記録する」ことではなく、「改ざんの余地がない、客観的な方法で記録する」ことが求められている点にあります。
厚生労働省が2017年に策定した「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン」では、始業・終業時刻を確認・記録する原則的な方法として、次の2つを挙げています。
使用者が現認して記録する方法
タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録など、客観的な記録を基礎として確認・記録する方法
つまり、「本人が後から書き込む」タイプの記録は、原則的な方法としては認められていません。
このガイドラインが厳格化された背景には、自己申告制の不適正な運用に伴う割増賃金の未払いや、過重な長時間労働という社会問題があります。
労働者本人による申告のみに頼る運用では、上司の圧力や職場の空気により実態と乖離した数字が記録される、いわゆる「サービス残業」の温床となりやすいことが指摘されてきました。
手書きの出勤簿や、後から自由に上書きできてしまうExcelの勤怠表は、こうした改ざんリスクを排除しきれないため、「客観的な記録」の要件を満たさない可能性が高いとされます。
自己申告制を採る場合には、実態調査や補正など、複数の追加措置が別途求められる点も見落とせません。
このため、実務としては、タイムカードやICカードの打刻ログ、PCのログイン・ログオフ記録、そして入退室管理システムの入退室ログといった、機械的・自動的に記録されるデータを労働時間把握の基礎とする運用が主流となりつつあります。
A. 厚生労働省のガイドラインに準拠した客観的な記録として利用可能です。
厚生労働省のガイドラインでは、自己申告と実態の乖離を確認する際の「客観的なデータ」として、入退場記録やPCの使用時間の記録が明示的に例示されています。
スマートロックによる入退室ログは、まさにこの「入退場記録」に該当する客観データです。
具体的には、次のような理由から証拠能力が高いと評価されます。
本人以外による打刻(代理打刻)が構造的に困難:ICカードやスマートフォンで解錠しないと物理的にドアが開かないため、「他の人にタイムカードを押しておいてもらう」という不正が発生しづらい構造になっています。
改ざん耐性が高い:クラウド側にリアルタイムで送信・保存されるため、後から本人や管理者が数値を書き換える余地が極めて小さい設計です。
記録の粒度が細かい:秒単位・イベント単位で「誰が」「いつ」「どの扉を」開閉したかが自動記録されるため、始業・終業時刻の裏付けとして十分な情報量を持ちます。
もちろん、入退室ログをそのまま「労働時間」として扱うのではなく、休憩時間や中抜けの扱いを社内ルールで整理したうえで、勤怠管理システムと連動させて出勤簿を作成する運用が実務上のスタンダードです。
「入退室ログを一次データとし、勤怠システム側で最終的な労働時間を確定する」という二段構えにすることで、客観性と実務運用の両立が可能になります。
ここからは、法人向けスマートロック・入退室管理システム「Akerun」を提供するフォトシンス社が、日々の商談・導入企業のデータから見えてきた「出勤簿のクラウド移行」の実態を、総論としてお届けします。
日々のデータの総論として近年顕著なのが、労働基準監督署の調査(臨検)を意識して労務コンプライアンスの強化を急ぐ、中小企業からの相談が増加しているという傾向です。
具体的な相談内容として多く聞かれるのが、「顧問社労士や税理士から、既存のExcel出勤簿では客観的な証拠として不十分だと指摘されるリスクがあると警告された」というものです。
特に、次のような企業層でその傾向が顕著となっています。
従業員数が数十名規模まで成長し、労務管理が属人的なままになっている企業
過去に労基署からの是正勧告を受けた経験がある企業
ISMSやPマーク取得を機に、労務管理データの客観性・信頼性を見直したい企業
IPO準備を進めており、労務デューデリジェンスに耐えうる帳簿整備を急いでいる企業
これらの企業に共通するのは、「紙とExcelの限界」を経営レイヤーが認識し始めているという点です。
誰でも上書きできる表計算ソフトの出勤簿は、いくら運用ルールを整えても、「客観性」という一点でどうしても心もとない、という悩みが底流にあります。
もう一つの総論ファクトとして注目すべきは、「Akerunの入退室ログをベースに出勤簿をクラウド自動生成する運用に切り替えた導入企業において、管理部門の「精神的負担」が定量的に大きく軽減している」という傾向です。
万が一の労基署調査の際にも、客観的かつ正確なデータを一発でCSV出力して提示できる安心感は、これまで管理部門が抱えてきた「もし調査が来たらどうしよう」という漠然とした不安を、根本から解消する効果を持ちます。
導入企業からのヒアリングでは、次のような声が多く聞かれます。
「Excelで前日の残業時間を修正するかどうか、担当者が毎月悩んでいた作業がゼロになった」
「労基署対応を想定した資料準備を、事実上いつでも即応できる体制にできた」
「監査法人・社労士からの資料依頼に対し、日付範囲を指定するだけで数分で提示できる」
紙の出勤簿を段ボールで保管しておく、Excelファイルをフォルダ階層深くに埋もれさせるといった従来型の運用と比べ、クラウド化は「必要なときに、正確なデータを、瞬時に取り出せる」という業務の質そのものを変える転換点となっています。
さらに、Akerunは主要な勤怠管理システム(KING OF TIME、TeamSpirit、freee人事労務など)とのAPI連携にも対応しています。
「オフィスの扉を開けた最初の記録」=出勤打刻、「最後に閉めた記録」=退勤打刻、として自動的に連動させることが可能です。
手動打刻の手間を省くと同時に、実際のオフィス滞在時間と自己申告された労働時間の乖離を自動的にあぶり出せるため、労働基準法遵守の観点でも極めて有効な仕組みとなります。
改めて本記事の要点を整理します。
出勤簿は、労働基準法によって作成・保存が義務付けられた法定三帳簿の一つであり、業種・規模を問わずすべての事業者が対応必須。
2020年4月の法改正により、保存期間は原則5年(当面の間3年)に延長。実務上は5年分の保存を推奨。
記載必須項目は、氏名・出勤日・始業終業時刻・休憩時間・時間外労働・休日労働・深夜労働など多岐にわたる。
働き方改革関連法により、労働時間は「客観的な方法」で把握することが義務化。手書きやExcelでの自己申告は原則NGとされ、タイムカード・ICカード・入退室ログなどが基本となる。
スマートロックの入退室ログは、厚生労働省ガイドラインに準拠した客観的な記録として利用可能。改ざん耐性が高く、代理打刻も構造的に困難なため、労基署対応にも耐えうる証拠能力を持つ。
Akerunでは、入退室ログをベースにした出勤簿のクラウド自動生成により、「万が一の労基署調査の際にも、客観データを一発でCSV出力して提示できる安心感」が、管理部門の精神的負担を大きく軽減している。
紙・Excelでの出勤簿管理は、もはや「非効率」というレベルの話ではなく、法令適合性のリスクそのものになりつつあります。
法改正に完全準拠したスマートな出勤簿管理へと移行する上で、入退室管理システムAkerunは、既設のドアに工事不要で後付けでき、最短3日から導入可能なクラウドサービスとして、多くの企業の一次データ基盤を担っています。
労務コンプライアンスの強化と、管理部門の業務負担軽減を同時に実現したい企業のご担当者様は、ぜひ一度、Akerunによる出勤簿クラウド化の具体的な運用イメージをご検討ください。
この記事を書いた人
西村幸
株式会社Photosynth マーケティング部
スマートロック・入退室管理システムの導入支援を中心に、法人向けセキュリティソリューションの情報発信を担当。オフィスやフィットネスジム、シェアオフィスなど多様な業種への導入経験をもとに、実務に役立つ記事を執筆しています。

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